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by konlon

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蘇った”まんが映画”!?

ベサメムーチョ作、舛成孝二監督の劇場オリジナル・アニメーション『宇宙ショーへようこそ』が2010年6月26日に公開され、話題を呼んでいる。2008年1月にアニメ雑誌において、当時『ザ・宇宙ショー』の仮タイトルで製作中だった本作品の存在が発表されて以来、ベサメムーチョや舛成監督のファンをはじめ、その田舎路線風のイメージイラストから興味を抱いたアニメファンたちにとって、一日千秋の思いで公開を待ち望んでいた事であろう。公開前の『宇宙ショー』が、『ザ・宇宙ショー』の仮タイトルで紹介されていた間は、数点のイメージイラスト以外は、ストーリーや登場キャラクター等の詳細事項はほとんど不明で、この機密保持体制(?)に、製作サイドの作品への拘りを、アニメ映画ファン達は感じ取り、完成作品はきっと”すばらしい”ものとなるであろうと、期待と興奮に胸を躍らせていた。公開が近づくにつれ、webサイトやCSでの特番などの宣伝活動が活発になり、作品関係者の感想や、物語や作品映像の一部が紹介されるにつれ、その期待と興奮は最高潮に上り詰め、一般公開を迎えることとなった。
公開された完成版『宇宙ショー』は、それを目にした多くの人々がその映像と物語に魅了されたらしいことがweb上でも報ぜられ、製作発表時の時めきと予感が確かであったことが伝えられてきた。日本の地方農村から大銀河宇宙へと続く、魅惑の映像世界はやっぱり”すばらしい”作品だったと再認識させられるものであった。田舎の小学校に通う5人の少年少女が、異星人に出会ったことから始まる宇宙規模の異界交流譚を、『宇宙ショー』は懐かしさと新鮮さを交えたビジュアルで描き、個性豊かな異星人達との出会いと別れを通じた、少年少女達の心の成長物語を奇想天外なストーリーに乗せて展開された。主人公達の住む土地の産物と宇宙最大級の海賊エンターテインメントショーを鍵に、宇宙の古代遺産をめぐる闘いまでに拡大発展していくストーリー展開の中で、等身大の少年少女達が自然体で活躍する姿に思わず引き込まれ、約2時間16分の”宇宙修学旅行”体験をしているかのような感覚を憶えるのであった。
御伽噺を思わせる、宇宙都市や惑星のシュールな光景に、子どもの描いた想像画がリアルな生物にクリンナップされたかような、ポップ感あふれる容姿をした異星人や異界生物、生体機械(?)等が跋扈する宇宙は、近年のアニメ・マンガが描く、科学的考証の積み重ねで構築された、リアリティ重視の宇宙設定がスタンダードとされる傾向にあって、新鮮さと懐かしさに満ちた、想像力の自由さというものを観客達に現前させたかのような印象に思われる。御伽噺的要素を備えたビジュアルという点では、『宇宙ショー』は、「東映まんがまつり」(註)枠内で上映された『ガリバーの宇宙旅行』や『空飛ぶゆうれい船』、『海底3万マイル』等の、「カラー長編まんが」を想起させる。アニメーション映画が”まんが映画”と呼ばれていた、'60年代から'70年代始めに東映動画が「カラー長編まんが」として製作した、アニメ映画が持っていたキャラクター描写やその動き、ストーリーの展開と場面転換といった構成要素が直線的に進化した先の、'00年代の姿を、『宇宙ショー』から見受けられるような印象であった。「東映まんがまつり」の長編作品は、'70年代に入ると名作童話路線に移行し、オリジナル性は影を潜め、'80年代以降は『少年ジャンプ』系マンガ原作作品がメインとなって、'90年代末までには消え去ったようである。片渕須直監督作『マイマイ新子と千年の魔法』('09年)が、東映の名作童話路線や東映動画スタッフが移籍した東京ムービー新社や日本アニメーション製作の、「名作劇場」等のTVシリーズ系へ分岐した”まんが映画”の進化形態とするならば、『宇宙ショー』は、東映動画オリジナル「カラー長編まんが」系のDNAを濃く伝えた”まんが映画”の進化形態なのかもしれないと考えられないだろうか。『宇宙ショー』の作品イメージの中に、初期の東映動画製”まんが映画”との近親性が強く感じられる点からみて、もし、東映動画の劇場用オリジナル長編が、スーパーロボットや変身ヒーロー、ジャンプ系の影響を受けずに、そのまま進化発展していったとするならば、『宇宙ショー』のような作品は、遅くとも'00年前後の間に完成・公開されていた可能性が考えられそうな気がする。
'60年代の”まんが映画”・東映オリジナル長編アニメは、リアルタイムで観られず、”あのとき”の雰囲気を感じられなかった者でも、『宇宙ショー』を通じて、当時の”まんが映画”から伝わる映像イメージと「凄かった」感をなんとなく想像させられ、かつての「東映まんがまつり」で味わったであろうワクワクとトキメキまでも疑似体験できるのかもしれない。『宇宙ショー』は、まさに、原作に由来しない映画用オリジナルストーリーの”まんが映画”が、ゼロ年代末に蘇った作品といえるかもしれない。
公開から半月以上が経過したが、『宇宙ショー』でようやく当時の「東映まんがまつり」鑑賞者が感じたであろう心境とシンクロできた、という思いがじわじわと込み上げてくるような感覚を覚えるのである。

『 宇宙ショーへようこそ』よ、'10年の夏は、本家ですらもう見られなくなった「東映まんがまつり」の興奮と感動を、もう一度子ども達とかつての子ども達の前に!
現在上映館は大都市中心ですが、家族向け娯楽としての”まんが映画”の正統後継者といえるかもしれない『宇宙ショー』こそ、地方の中小映画館で上映され、地元の”よい子”やかつての”よい子”たちの目に触れる機会がなくてはならないと思っている。
『マイマイ新子』が川越や高知など、地方の劇場で上映され続けているが、同様に『宇宙ショー』の地方中小館上映も実現して欲しいと願っている。地方ローカルで『宇宙ショー』が上映された時には、スナック菓子の香りが感動と共に館内を満たすだろうことを密かに想像しつつ…。

註:
「東映まんがまつり」のプログラム呼称が定着したのは、’69年の『長靴をはいた猫』以降で、それ以前は、「まんが大行進」、「東映こどもまつり」、「東映ちびっこまつり」の呼称が用いられていた。

追記:
『宇宙ショー』劇場公開と同時に、メディアファクトリー刊『電撃大王』にて、小野敏洋作のマンガ版の連載が開始されました。『電脳コイル』では少女マンガ視点からのアプローチが試みられていましたが、今回の『宇宙ショー』では、少年マンガの視点と手法によるアプローチを通じて、アニメ本編の魅惑の世界とキャラクター達が、マンガの画面に如何様に転写されるか大いに期待されます。

『宇宙ショー』の第一主役である「ナツキ」が、ヒーローもののファンだった設定も、「東映まんがまつり」という点で若干リンクするかな?とも邪推しています。「まんがまつり」は、ヒーローものも意識したプログラムだったということもありますので。
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by konlon | 2010-07-18 23:18 | アニメーション