パーソナル文化研究所・空琉館の情報誌的ウエブログです。


by konlon

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anotherマイコー

故マイケル・ジャクソン最後のステージリハーサルのドキュメンタリー・『This is it』のDVDが2月半ばに発売され、活発な宣伝とともに好調なセールスを見せているそうである。ところで、「マイコー」といえばマイマイ新子、略して「マイ子ー」。昨年11月に短期公開された、片渕須直監督作品の劇場用アニメーション作品・『マイマイ新子と千年の魔法』が思い出される。髙樹のぶ子の小説原作で、1950年代の山口県を舞台に少女の日常を描いた作品だが、1000年前の光景を主人公が想像しながら現実と向き合う姿が描写されている。『THIS IS IT』とは違い、一見地味ながら濃密で魅力豊かな内容から、根強いファンが続出しているらしい。故に、『THIS IS IT』同様上映延長/再上映する映画館が現われた。そして、後はDVDなどのソフト化が待っている、段階に入りつつあるのだが、ここでなにやら怪しい雲行きになっているようである。情報筋によると、ソフト化が危ういらしいと片渕監督あたりから発せられているという。詳しくは解らないが、片渕監督が日本海軍機の研究を行っていて、学研の戦記本などに寄稿していることと関係があるのでは、と考えてみたくなる。また、15年前の劇場用アニメ映画で、木根尚登原作、佐藤順一監督の『ユンカース・カム・ヒア』の状況と類似しているのでないかと思われるのである。『ユンカース』も文部大臣推薦だったかお墨付きをいただきながら、NHK-BSでのTV初放送はかなり時間を要し、ソフト化は2000年代まで持ち越されたことが思い浮かばれる。『ユンカース』は、『マイマイ』よりも宣伝が控えめの印象で、上映館も少なく、ひっそり上映されたのだが、巡廻形式での上映方針だったように考えられる。あまり詳しくは解らないがこれが大きく関わっていたのではないかと思われるのである。木根尚登原作、出演という話題性やマンガ化等メディアミックスも試みられていた所から見て、『ユンカース』ソフト化遅延の要因は、版権など、原作者に由来するものとは思われ難い。『マイマイ』も巡廻方針が予定され、それがソフト化を阻む要因となっている可能性も考えられる。『マイマイ』の場合、特に問題となるような描写はみられず、ファンの評価もそんなに低くないのだから、インターネットなど『ユンカース』の時よりも情報伝達手段の発達している現在、署名や要望などファンたちの働きかけが比較的容易な状況下、ソフト化などについて『ユンカース』よりはやや好転するかも、という気がするのだが、アニメ映画をめぐる、保守的な空気がそこから垣間見られるように思われる。
それより最も憂慮すべきは、このようなソフト化に対しての困難的状況が、動画サイト上での映像流出や海賊版を横行させる土壌になるのではないかということであろう。未ソフト化に付け込んだ流出映像や海賊版の出現が、闇市場を形成し、製作者や真摯に作品をリスペクトするファンたちや純粋に作品を味わいたい人々の中に影を落とすことで、作品に不当な評価が付き、泥を塗るような事態を引き起こす可能性を孕んでいる事をよく意識していかねばならないと考えるのである。海賊版の登場により、ソフト化に拍車がかかった、ということになれば、結果的に作品を脅迫してソフト化を勝ち取ったという風に受け取られ、作品やファンにとっても非常に不名誉だといわなければならない。作品を傷物にし、封印という流れを回避するためにも、作品が好きになった者一人一人が、自分自身にとって可能な範囲で、あくまで正当な手段で主張し続ける事を、良く考えて行動すべきであろう。

参考(*URL頭のhは省略):
廣田恵介氏『550 miles to the Future』内記事・「2月のメモ「DVD化」」(2010年2月25日、ttp://mega80s.txt-nifty.com/meganikki/2010/02/post-f1fc-12.html )署名は28日までで終了。

『たのみこむ』(ttp://www.tanomi.com/)でのリクエストも、現状ではかなり影響力を持っているようなので、有効な方法かもしれない。

(*10,04,27追記:『マイマイ』の上映館増加の他、DVDソフト化が決定したようです。これほど早期の実現に至ったこと誠に驚きとともに作品を愛し、リスペクトしていただいたファンの皆様による情熱の成果だと思います。)
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by konlon | 2010-02-26 08:30 | アニメーション

仏教に萌えられるか!?

先ほど、杜康潤(とこう じゅん)著のエッセイマンガ・『坊主DAYS』が発刊された。作者の兄が臨済宗(禅宗)の住職という事で、兄をめぐる仏教・僧侶絡みの出来事を綴った作品であるという。このブログでも寺院関係について、「萌え系」の看板寺院禅宗解説書提案の記事を発表して、日本仏教や僧侶に対するポジティブな認識がなされることを強く希望しているが、今回仏教(禅宗)関係についての、学習漫画的なものではないマンガ本の刊行は、日本仏教に対する再認識の機会を提供するものとして、大いに歓迎したい。日本国内における、プロフェッショナルを極めた世界の中で、自衛隊と並んで「ダサくて閉鎖的」といわれ、あるいは、古くから批判の対象となった「異世界の人」という認識が強かった日本仏教の僧侶について、日常に近い存在として、この作品が考え直す機会となることを密かに願っている次第である。作者の身内が禅宗系であるため、作品内容に禅宗系の紹介的要素も含んでしまったが、この事は、マンガファンたちに対する、禅宗への関心を高める契機としてのコンテンツ登場として歓迎すべき事であると同時に、日本仏教イコール禅の紋切り型イメージの強化という危惧も含まれているのではないかと思われる。日本仏教には多くの宗派が存在し、どれもが日本人の精神性に大きく関わっている事を考えると、少々疑問に感じる点もある。日本仏教や宗教家を題材とした作品を創るに当たって、密教系や念仏系、日蓮宗など日本仏教の他宗派に対する関心も向けられるべきであろう。(萌え看板の了法寺は日蓮宗寺院であるが、なぜ禅宗系寺院から萌えキャラ採用が始まらなかったのか、『坊主DAYS』がなぜ女性向けコミックスの新書館から刊行されたのか、これらの点も熟考すべきかもしれない)だが、国防や国際支援と同様に、日本人の宗教観を通じた精神性について、アニメ・マンガを生活の一部としている若年層の人々が、それを客観的に顧みるきっかけがわずかながらを登場したということで、この作品は重要なものとして位置付けられるのではないかと考えられるのである。
日本の伝統宗教が若年層へ継承・発展していくため、「萌え」と「煩悩」とは別のものであるというようなロジックを禅宗、いや日本仏教側から主張できるか、ということが今後の課題として重要になるのではないかと推測される。若い僧侶たちが美少女キャラについて語り合い、キャラグッズを集め、あるいは萌え絵師として活動し、痛車を乗り回す、ということが自然に受け入れられる社会の実現というものも、日本的宗教の今後の発展につながるのではないかと密かに考える次第である。
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by konlon | 2010-02-05 02:08 | マンガ