パーソナル文化研究所・空琉館の情報誌的ウエブログです。


by konlon

<   2008年 09月 ( 1 )   > この月の画像一覧

『プロペラ天国』 

『プロペラ天国』 ―回転と推進―
              ●空ドラ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ○恋愛探偵組
 現代か未来か分からぬ時代、この世には「普通人間」と「合成人間」の二種類の人間が存在していた。中学生の姉妹、桜田子糸と子鐘は、生徒の相談に応じる私設サークル「恋愛探偵組」を作り、活動を開始した。子鐘が気弱な姉を強くしようと謎の手帳「恋愛探偵組白書」をヒントにサ-クルを作ったのである。だが、子糸は合成人間であったため、調査対象となった他の合成人間たちに狙われる事になる…
 以上が富沢ひとし作『プロペラ天国』(以後『プロペラ』)の1~3話までのストーリー展開である。合成人間である子糸が自分以外の合成人間を敵に回して、普通人間のために戦うようなストーリー設定は『人造人間キカイダー』等の変身ヒーローものを連想させ、戦いの決着をつけるのが妹の子鐘であるというキャラクター設定は、1972年放映の特撮TVシリーズ、『アイアンキング』を髣髴とさせた。『アイアンキング』は静弦太郎と霧島五郎の二人が主役であるが、敵の巨大ロボットに止めを刺すのは、変身時間1分のアイアンキングに変身・巨大化する五郎ではなく、弦太郎の体力知力であった。『プロペラ』も敵の合成人間との戦いは、子鐘の体力知力が決め手になるのではないかと予想された。こうして、『プロペラ』は、桜田姉妹の掛け合いが楽しい学園アクションものとして、ストーリーが進行するのではないかという予感を感じさせた。しかし、4話以降、ストーリーは「恋愛探偵組白書」を軸にして、子糸・子鐘姉妹と合成人間との戦いが本格化する。校舎に隠されていたプロペラ付きの”戦闘型”合成人間が起動し、学校中の人々が記憶を操作される。子鐘もこれまでの記憶を消去され、子糸の性格はこれまでの「情けない」性格から「意地悪な」性格に変更された。子鐘は毎日のように繰り返される子糸の乱暴な振舞いに悩まされるようになった。小鐘は、子糸の優しさを取り戻そうと文通相手のペンネーム・「ラブラブ」から送られた本、「恋愛探偵組白書」の記事を参考にして、「恋愛探偵組」を再び作ろうとするが、これに気付いた子糸によって自室の衣装ケースに閉じ込められてしまう。だが、子鐘が閉じ込まれている間に戦闘型合成人間が活動を開始した。子鐘は文通相手の少年「ラブラブ」に助けられ、事情を知る。彼によると、「恋愛探偵組白書」は世界の動きを決める「シナリオ」であり、人々はそのシナリオに従って行動しているのだという。だが、シナリオでは合成人間は、最後にはその存在を否定されることになる。合成人間は自らの存在を維持させるためにシナリオを変更したのであるという。実はラブラブもプロペラ付きの戦闘型合成人間であり、「白書」のシナリオを本来の「オリジナル」に戻すために合成人間と戦っていたのであった。「白書」により、子糸が現在戦闘型合成人間達と戦っている所であると知った子鐘は、子糸を救いに戦いの場へと向かう。しかしその戦いは決着を迎えることはなく、戦いが今後も継続する事を暗示して、物語は静かに幕を閉じた。ストーリー全体の印象は、ドラマのTVシリーズでいう所の最初の1~2話分と最終の2~3話分を直接つなぎ合わせたような感じであった。個性的なキャラクター達とアクロバティックなストーリー展開で描かれた不思議空間は、富沢ひとしのマジックここに極まれりといった印象を読者に与えた単行本一巻分のストーリーであった。

続きは…
[PR]
by konlon | 2008-09-16 20:17 | マンガ