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by konlon

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音楽史のはるか深層に眠る「迷曲」に光を照らす迷曲セレクション第2弾をここに紹介しよう。

 1 トンネル天国/ザ・ダイナマイツ
 2 おやじのロック/フィフィ/ザ・フリー
 3 どうしても女に勝てなかった悲しい男の話
   /ザ・ジャイアンツ
 4 涙のエンゼル/ザ・ジャイアンツ
 5 真夏の夜の動物園/ザ・ダイナマイツ
 6 まゆげ/東京プリン
 7 携帯哀歌(エレジー)/東京プリン
 8 時間がたつのが早すぎて~時代遅れの男~ /東京プリン
 9 バブルアゲイン/東京プリン
10 ばぶるばす/いはたじゅり
11 青のり/ブリーフ&トランクス
12 平成たいやき物語/ブリーフ&トランクス
13 激!!極虎一家なめんなよ/極虎一家
14 行け行け飛雄馬「劇場版」/おぼたけし・森みどり
15 グリーンマン・マーチ/仲とも吉・グリーンピース
16 スピード野郎/平尾昌章
17 ヨッパラッタお嬢さん/ピンキー・チックス
18 がきデカ恐怖のこまわり君~悶絶バージョン~/葡萄畑
19 好きさブラックデビル/オレたち昔・アイドル族
20 レスラー/竹中直人
21 嫁津波/山田実とトップ・ゴージャス
22 ビバ・ラーメン/グッチ裕三とグッチーズ
23 トンネル天国/グッチ裕三とグッチーズ

1:今回のオープニングは、カルトGSの古典的傑作といわれる、ザ・ダイナマイツが演奏する「トンネル天国」でいこう。
「トンネル天国」は、ザ・ダイナマイツのデビュー・シングルで、1967年11月10日にリリースされた。当コンピレーションに収録されているのは、1968年5月発表のアルバム『ヤングサウンド・R&Bはこれだ!』に収録のものである。アルバム・ヴァージョンは、ライブ演奏に近い(筆者は実際に聴いたのか?)シングル・ヴァージョンよりも、レコーディングを意識した演奏である。アルバム版最大の特徴は、曲の最後に「鉄道唱歌」を繋げていることである。発表当時はあまり知られていなかったが、80年代になってから再評価されるようになり、1987年にはザ・ファントムギフトが本曲をカヴァーした。そして、90年代に入って、CD「カルトGSコレクション・ビクター編」によって70年代以降生まれの世代にも紹介された。

2:カルトGS中の一ジャンルであるソフト・ロックの代表的バンドとして挙げられるのが、フィフィ・ザ・フリーである。68年に本曲「おやじのロック」でデビューした後、「栄光の朝」、「限りなくあたえるもの」といった名曲を発表している。この「おやじのロック」は、ソフト・ロックよりはブリティッシュ・サイケ風のサウンドであり、明らかにアングラブームの時流に乗せられた、企画盤の様相をみせている。『レコード・コレクターズ』1999年4月号の特集記事(高木龍太著)では、「本来の姿ではなかった」と記されているが、発表当時の事情を知らない、CD世代の人々にとっては、よくできたコミックソングとして、純粋に受けとめてくれるだろう。2000年代の少子化時代において、聴いてほしい曲、歌ってほしい曲のひとつに挙げられる。

3/4:1968年1月にコロムビアからザ・ダーツの「ケメ子の唄」が発表され、オリコン2位にランキングされた。ビクターはこれに対抗して、ザ・ジャイアンツのヴァージョンを1968年2月に発表した。しかし、ダーツに2週間遅れたためかオリコン6位であった。続いて、このシングル「どうしても女に勝てなかった悲しい男の唄(以下、悲しい男と略す)」をリリースしたが、ヒットには及ばなかった。
A面の「悲しい男」は、加藤和彦の作曲で、「帰ってきたヨッパライ」の流れを汲む正統派アングラを意識したつくりになっている。このシングルで一番のみどころは、「獅子座」と刻まれた墓石(何かの石碑に文字を合成した写真か?)の上で、少女と雌犬を遠ざけようとしているジャイアンツのメンバー達を写したジャケットであろう。歌中のキーワードを盛り込んだ、ジャケの傑作であるといえる。B面は「涙のエンゼル」(松井ひさし作詞・作曲)という歌謡曲であり、A面のようなギャグは入っていない。A面とB面のギャップの違いもこのシングルの魅力であり、90年代以降のシングルでは思いもつかない構成であろう。ちなみに「恋愛射撃隊」(65年9月)のザ・ジャイアンツとは同名の別バンドである。
B面の「ブルー、ブルーゥエンジェル」を聴いているとなぜか米海軍アクロバットチーム「BLUE ANGELS」のテカテカ藍色の飛行機を連想してしまうのは何故!?

5:1968年6月発表の、ザ・ダイナマイツ3枚目のシングルA面。本曲最大の聴きどころは、ベースの吉田博による“絶叫”である。あのブルース・リーの映画より以前に、“絶叫”こと“怪鳥音”を発する者が日本にいたとは実に驚嘆させられる。和製怪鳥音の魅力を存分に味わって欲しい。

6~9:6から9までは、東京プリンの傑作を紹介してみた。聴くときは、曲の流れに意識をまかせ、曲中の歌詞を頭に思い浮かべてみること。
余談になるが、漫画にみられるキャラクターデザイン界の流れでは、「太くて濃い」眉毛が見直されているようだ。

7:この曲がリリースされた後、携帯をめぐる情勢はだいぶ変わってきた。「ポケベル」「ピッチ」はもはや死語になっているし、カラー液晶の「iモード」や、「写メール」、そして本格的ゲームのお株を奪うような「iアプリ」といった携帯の技術革新は、文字通りの哀歌(エレジー)にしようとしている。

8:まさに歌詞の通り。ぼーっとしていたら21世紀になってしまった。なんとか追いつかねば。

9:バブル景気とは、ソ連崩壊直前に西側某国で起こっていた経済現象である。この事実を考えてみるとバブルを生み出した要因を知るヒントが見つかるかもしれない。東西冷戦の時代は、核戦争のもたらす破滅に誰もがおびえていた。ただ核戦争によって全てが無に帰すのが怖かったので、みんな冷戦構造の終結を望んでいた。人々は目先の恐怖ばかりしか考えていなかった。冷戦というものについて深く学ぼうとはしなかった。戦争と平和が経済に及ぼす関係が分かれば、バブルアゲインの方法が徐々に見えてくるのだろうか。

10:NHK「みんなのうた」に発表された曲の中では、近年(2000年代に入って)久々の秀作。14歳のいはた じゅり(井端珠里)が、素朴であどけなく歌っている。
井端珠里は、『ポケモン』テレビシリーズのエンディング「ポケットにファンタジー」で小林幸子(「風といっしょに」、ポケモン映画長編第一作主題歌)と歌い、ポケモン映画の第一弾短編『ピカチュウのなつやすみ』OP、EDにも参加している。『ポケモン』と結構縁の深い人物なのだ。
 それにしても「あわわ あわわ」のコーラスで始まるこの曲は、聴けば聴くほどバブル景気時代を復活させる言霊のように思えてならない。歌詞の中にはバブル時代を復活させるアナグラムが隠されているのかも?

11:半径5メートルの日常を歌にする、ブリトラの傑作。歌詞については説明するまでもなかろう。こんな歌詞に命を吹き込むメロディもまた味わい深い。

12:「およげ たいやきくん」に対するブリトラの回答である、たいやきの歴史に関する秘話を堂々と歌い上げ、我々にたいやきをめぐるドラマをリアル感たっぷりとアンコのように説明してくれる。だが、こうして高まったテンションも、最後の一言によって一挙に脱力させられる。10回聴いたら癖になってしまいそうでちょっと怖い。

13:宮下あきら『激!!極虎一家なめんなよ』のイメージソング。漫画作品の映像化(ドラマ、アニメのテレビシリーズ)はメディアミックスの基本だが、いまいち大衆向けでない、“コア”、“マニアック”な作品に関しては、オリジナル・ビデオアニメーションやVシネマが登場するまでは、イメージレコードを制作することが多かった。

14:1980年代初頭に、TVアニメ『巨人の星』がリバイバルした時、『巨人の星』の劇場用総集編に、原辰徳などが登場する新作カットが追加されて公開された。(1982)本曲はその際にディスコアレンジされたヴァージョン。ちなみにTV『巨人の星』では、本編にディスコのシーンがあり、そこではザ・ゴールデンカップスの歌が流れていた。

15:この曲、聴いてみると、軍艦マーチの節ではないか。ヒーロー本体も脱力ものだが、このテーマソングは思いっきり脱力させられる。(^^;)

16:山下敬二郎、ミッキー・カーチスと並ぶ「ロカビリー三人男」のひとり、平尾昌章の隠れた傑作。(1964年発表)レースにかけるスピードレーサーの生き様を歌っているのだが、何とそれが数え歌であるとは。(谷川俊太郎作詞)60年代以降では考えも付かない、ある意味「怖いものなし」といえる感覚は、映画『ドリブン』の映像表現を追い越して、最終的には脱力感というゴールへ達しようとしている。

17:「帰ってきたヨッパライ」の女性版を意識したシングル。(1968年3月)内容は、主人公が、スタンドバーで酒を飲みながら彼氏を待っている内に閉店になってしまう、というもの。曲中のお酒を注ぐエフェクト音に味わいがある。ジャケ真中の、戦隊ヒーローを髣髴とさせる色分けされた衣装を着けたメンバーも印象的。

18:葡萄畑のアルバム『スロー・モーション』収録。『がきデカ』のイメージソングで、シングル盤とは別ヴァージョン。早回しを用い、伴奏の受話器をとる部分で曲を切る構成は、思い切りがよい。

19:『オレたちひょうきん族』「タケちゃんマン」コーナーの人気キャラ、ブラックデビルのテーマソングとして、番組中で発表。発表時の映像は、今で言うプロモーションビデオのような感じで、明石屋さんま演じるブラックデビルの耳(頭のヒレ?)が光る電飾付きの専用コスチュームが使用された。

20:竹中直人が贈る、ジャイアント馬場とマイケル・ジャクソンに対するオマージュ。竹中の声の使い分けが面白い。

21:金子修介監督映画『山田村ワルツ』において、山田村の花嫁獲得イベント「おたふく祭り」の見せ場のひとつである、山田村が招待したバンド・「山田実とトップ・ゴージャス」が歌う歌。山田実とトップ・ゴージャスの正体は、あの米米クラブであった。近年はガメラシリーズやゴジラ映画の監督で知られる金子監督だが、80年代には、『恐怖のヤッちゃん』、『どっちにするの』といったコミカルな映画を監督していた。レンタルビデオ店には、これらの作品を金子修介コーナーに並べる勇気はあるのだろうか、少々疑問である。

22:邦楽・洋楽のカヴァーで、隠れたファンを持つNHK『ハッチポッチステーション』で歌われた、『ハッチポッチ』オリジナルの曲。ラーメン関係のコミックソングはを聴きたい者にとって、これは待望の一曲であった。ラーメンファンのテーマソングとして、これは後世に残る傑作となるであろう。

23:『ハッチポッチステーション』では、意外な曲をカヴァーしていることがある。意外さでは、「トンネル天国」が一番であろう。60年代のカルトGSがまさかこのような番組で90年代にめぐり会えるとは奇遇である。埋もれた迷曲の数々が、新世紀に再生されることを願い、新「トンネル天国」で今回の迷曲セレクションを締めくくる事にしよう。
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by konlon | 2007-05-16 13:51 | 音楽