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by konlon

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新作登場!

1月に発売された須藤真澄先生の新刊・『庭先案内1』は、雑誌連載時より発売が期待されていた、久々の須藤ファンタジー作品集であり、先生独特のものといえる、短編のストーリー展開や画面の構成、作画表現のハーモニーが楽しめる内容である。

今回は雑誌掲載時に私空ドラが他で紹介したことのある、第三回「メッセージ」を改めてとりあげてみる。

(ネタばれ注意か?でも、知ってても面白いかも)
ストーリー概要:
 両親がシンガポールに出ているため、現在二人で暮らしている姉妹がいた。妹は最近夜になると「びわ」「かめ」「こめ」などの文字を部屋の壁に落書きするようになっていた。眠っている妹が無意識に行っているのだ。大学生の姉はその原因を究明しようと、ある夜眠っている妹を見張ることにした。突然起き出して落書きしようとした妹を姉が取り押さえたとき、妹の耳から七福神が現れた。彼らの話を聞いたところ、姉がお守りとして両親に渡した、姉自筆の七福神の絵に恵比寿様が無かったことに講義しようと、七福神は妹の夢に入ったとのことであった。姉は描き疲れて恵比寿様を描き忘れていたのである。初めは姉の夢に入ろうとしたが、姉の夢には、現在彼女が関心を持っている、曼荼羅のイメージに占拠されており、その「サイケ」さに耐えられず彼らは妹の夢に入ったのであった。妹が夢で七福神たちを見たとき、妹は七福神個々の持つ各アイテムに注目していたので、妹は、琵琶や亀など七福神個々に見えるアイテムの名前を無意識に書いてしまっていたのである。姉は恵比寿様の絵を、改めて両親のもとに送ることを約束し、七福神は宝船に乗ってシンガポールに船出した。こうして一夜が過ぎ、姉は目を覚ましたがその夜のことは忘れ去っていた。
しかし、翌朝壁を見ると、そこには姉妹に向けての、七福神からのメッセージが書かれていた。姉は壁に恵比寿様を描き加え、落書きの書かれた壁を写真に撮って両親に送ろうかと思うのであった。大阪在住の姉妹を主人公にした短編であり、姉のボケと妹のツッコミが軽快で楽しい。キャラクター描写も、須藤独特の眼の表現が各キャラの性格を明確に表し、上方漫才的ストーリー展開に一役買っている。ラストの、七福神の乗る宝船がシンガポールに旅立つイメージ描写は、雲を斜めに配した空に、宝船とシンガポールのシンボル、「マーライオン」像をトーンの切り絵で表現し、画面右下に配置された大阪のシンボルである「通天閣」と対比させて、印象的な爽やかさを演出している。

東京都墨田区出身のファンタジーマンガ作家である、須藤先生が関心を寄せているものの一つとして、大阪を中心とする関西圏の文物が挙げられる。須藤先生の関西文化に対する"想い"は、作品の中にいくつか見受けられ、この「メッセージ」に見られるような、上方漫才的なリズム感は、須藤先生の作品が持つ、「静と動」の対比を際立たせ、ストーリー展開の軽快さに多大に関っていると思われる。須藤先生の関西文化への並ならぬ関心と憧れが作品から感じられる一編であり、作品中に見られる作画描写やキャラ同士のの掛け合いから、新たな須藤先生のファンタジー表現を垣間見せてくれる、非常に興味深い作品といえるであろう。
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by konlon | 2006-02-24 07:21 | マンガ