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by konlon

ドキュメント・電脳メガネ

前回『電脳コイル』についての雑感記事をUPしましたが、『コイル』の魅力豊かな世界というものを私なりに伝えてみたいと思い、オリジナルキャラを使った、ドキュメンタリー形式の創作物を発表してみることにします。どうぞご覧ください。

 ○~プレゼントのルーツを追って~
 僕の名は大津丈滋(おおつ じょうじ)、電脳技術の分野に関する雑誌などでライターをやっている者だ。少し前のオフの時に、偶然入ってきたネタについて個人的に調査してみたので、この場を借りてお伝えしよう。ふとしたことから僕が手にした、一つの電脳メガネ。そこから始まった追跡の成果を、皆さんにご紹介したいと思う。しばしの間お付き合いいただいてほしい。

 事の始まりは数ヶ月前、友人のM君が僕のところにやって来た時からだ。彼は僕から幾ばくか借金していたのだが、とても返済できないような状況になっていたので、これで勘弁してほしいと小さな黒っぽい箱を僕の前に差し出した。箱の中身を見ると、内容は幼児用の電脳メガネセット一式であった。どういうことだと僕が尋ねると、
「お前のメガネにつないで映像を見てみろ」
とMが言う。そこで、箱から出したメガネをIRセンサで僕のメガネとつないでみると、メーカーロゴの後に、幼児用の設定画面ディスプレイが表示された。明るい画面に猫と少女の素敵なキャラクターがお出迎えしてくれる。毒のない、いかにも幼年向け、といった可愛らしいナビゲーションキャラクターだ。キャラクターにどこか見覚えがあるので、画面の隅々をよく見ると、作者表示にファンタジーマンガ作家の「工藤真弓」の名前が見える。あまりにも意外なアイテムであったので、一体これは、とM君に尋ねるとM君は、
「驚くと思ったぜジョージ、結構レアな工藤グッズだろ」
と答える。確かに工藤真弓のレアなキャラグッズだ。僕が工藤真弓のファンであることを知っていて、お宝アイテムを選んだのであろう。僕もこんなところに工藤キャラに出会えるとは夢にも思わなかった。



 さて、メガネの外観や機能だが、2026年以降使われている通常モデルと大きな違いはない。だが、メガネに表示されたシリアルナンバーを見ると、僕が知っている通常の幼年向けモデルのメガネとは違う形式のナンバー表記であった。箱も市販の幼児用のものとは思えないほど地味で味気ないデザインだ。どうやら市販の製品ではなく、現行モデル以前に試作されたものではないだろうか。意外な所で出遭った工藤グッズに感激すると同時に、その素性を知りたくなった僕は、本業の原稿のことなどすっかり忘れて、早速このメガネの”身元調査”を始めることにした。とりあずメガネ内のファイルを調べ、説明書の表記や、ネット検索、掲示板などを駆使してみると、このメガネは幼年向けメガネでは定評のあるメガマス社が製造したもので、幼年向けとして現在普及しているMeg-IF009a1の先行量産モデルらしい。IF009シリーズは、ユーザーが危険な状態になったときにセキュリティセンターに特殊な信号を発して、ユーザーの状況に応じた処置が迅速に取れるようにした点が最大の特徴である。とあるサイトの記事から推測して、IF009シリーズが正式に生産される前に12セットだけ作られたものの一つらしい。外観は通常型のIF009シリーズと同一のデザインであり、、一目では見分けがつかない。だが、設定画面のナビゲーションキャラのデザインは同じ作者の絵であるが、正式版とは少し違う。僕はこの魅力的なメガネの出自と”兄弟”の行方に興味を引かれ、M君を誘い、愛車を駆ってメガマス社の本拠地・金沢市とメガマスの勢力圏内にある、電脳設備が最も充実している大黒市に取材に出ることにした。
 金沢では、最初に、有力な情報を知っているであろうと予測して、事前にメールで連絡を取っていたメガマスの職員と市内の喫茶店でインタビューを行った。彼は幼年向けモデルの開発経緯について、実に興味深い話をする。危険感知システムの搭載が開発に大きく関わっていたという。軍用の救難システムが原型であるのだが、人間の精神とリンクするという”隠し機能”を限定エミュレートしたものでもあるという。 IF009シリーズの正式量産が決定した経緯について、職員は、先行モデルが配布されて数ヵ月後にユーザーの一人が飛行機事故に遭ったときの出来事が、普及に大きく関わっているのだろうと語った。そのとき乗客は絶望的な状況下におかれたものの、メガネの危険感知システムの作動により適切な救助活動が可能となり、本人を含む9割の乗客が救助された。これは当初の予測を大幅に上回るものであった。そのことが幼年向け新モデルが正式に量産された最大の理由であったということを彼は話してくれた。また、僕の予想通り先行モデルの多くはメガマス関連の人物に配られたらしい。インタビューを終えた僕は、続いて金沢在住のM君の知人で、フリープログラマーの松野から話を聞く。危険感知システムの過去ログから、現在までのメガネの経緯がわかるらしい。あの12セット分の危険感知用の回線は正式量産モデルとは別の回線を使っているため、見分けは容易だと松野は言う。約二時間ほどの後、松野は解析データをプリントアウトして僕に渡してくれた。このデータから、各地に散らばったメガネ12兄弟の行方がかなりはっきりしてきた。ちなみに僕が持っているものは、僕が起動するまで電源を入れていなかったために、製造直後のチェック以外の通信データが残っていなかった。おそらく何らかの理由で予備に回されたためか、未開封のまま各所を転々とした結果、M君の手に渡ったのだろう。その日の午後は金沢の中央図書館でデータの裏づけとなる資料を閉館ぎりぎりまであさりまわし、その日の晩は車の中で一泊して、二日目の大黒市取材に備えた。翌日の大黒市では、午前中に図書館で資料集めをした後、正午に事前にアポを入れていた市の職員と市役所内の食堂でインタビュー。彼は、この町で以前起こった怪現象とメガネとの関係について、かなり詳しい話をしてくれた。話の内容からみて、あの幼年向け先行モデルのユーザーに、空間管理室長の身内も含まれている可能性は大きい。確実な情報とはいえないまでも、この話を聞けたことで、実に有意義なインタビューになったと思う。午後2時以降は、先ほどのインタビューの内容と「松野データ」に基づいて、怪現象が見られた箇所を中心に現地踏査を行うことにした。途中、突然現れてきたサーチマトンに妨害されることもあったが午後7時ごろまでに全ての踏査を終えることが出来た。意外な発見もあり、実に収穫は大きい踏査であった。こうして二日間の現地取材は無事に終了し、僕たちは予想以上の成果に満足しながら、愛車で帰路についた。
 
追記:別ブログ「COOL館通信」にもほぼ近い内容の記事をアップしてありますので、コメント等が送りにくいときはそちらもご利用ください。
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by konlon | 2008-05-19 01:45 | アニメーション