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by konlon

あの話題作はどうなったのか

1974年から1980年に『週間少年チャンピオン』で連載されていた山上たつひこ作の漫画作品『がきデカ』はその生理的刺激を誘う描写と感覚に訴えかけるギャグによって、当時の読者からの絶大な反響を呼び、全26巻の単行本は数多く売れたという。しかし、現在我々は『がきデカ』を見たいと思っても容易に目にする機会はほとんどないように思える。26巻も発売されながらもチャンピオンコミックス単行本を古書店であまり見ない。近年になって選り抜き形式の、ベスト盤とでもいうような"傑作選"がマンガ文庫や「コンビニマンガ」で見られたが、それもすぐに姿を消して、増刷もされていない。ギャグが過激であり、時事ネタの導入が多かった事もあるだろうが、他の人気マンガ作品と同じように、目にした者に少なからず影響を与えたであろうことから考えても、見たいときに目にできるような環境を作っていただきたいものである。
さて、『がきデカ』には、葡萄畑によるイメージ曲が作品連載当時に作られている。「がきデカ恐怖のこまわり君」は、洋楽ロックを取り入れながらも、マンガ作品のもつ、価値観破壊色の強い作風が音楽に変換されていて、『がきデカ』のマンガを知る者にとっては、思わずノリに乗って口ずさみたくなるような曲である。シングル版B面の『スジ子のブルース』も、『がきデカ』のノリを引き継いだような感じで、歌詞と曲の織り成す不条理性を、A面から流れるように展開させて、飽きの来ないレコードとなっている。(CD『ニューロックの夜明けポリドール編・自由に歩いて愛して』に収録。現在入手は難しいか)また、葡萄畑のアルバム『スロー・モーション』には「恐怖のこまわり君」の別バージョンが収録されているが、アングラ歌謡特有の早回が使われた歌唱と、アルバムバージョンの後半部をカットした構成は、マンガ作品のもつ不条理性のイメージを音楽で表現したもののように思われて面白い。
『がきデカ』は、'89年に突如思い出したかのようにアニメーション作品化され、TVシリーズとOVAの両方(別企画で始まる)発表された。ビデオレンタルが普及しだした時期であったものの、OVAは注目を集めなかったらしく、TVシリーズ(フジテレビ系列で放送)は『ハイスクール奇面組』、『ついでにとんちんかん』といったジャンプ系作品を、時勢の要求に沿った、洗練された感覚でアニメ化していた時間帯で放送したため、『がきデカ』に登場するヒロイン達を前面に立てた構成になっていた。そのことが、時代の空気にずれを生じ、どこか違和感を感じてしまう雰囲気を持っていたのであろうか、TVアニメ版は原作のイメージを忠実に再現していたにもかかわらずマンガ同様の大ヒットとはならなかった(OVA版も同様か)。ギャグ系作品は作品の人気が上昇している時期にあわせてメディアミックス展開させることが各メディアでの人気拡大にとって重要であることを、これは示していたのであろうか。アニメ版と連動する形で、チャンピオン誌上に『がきデカ』の新作が月一回の形式で全12回が掲載された。それは、漫画家としての、山上たつひこ自身の締めくくりの場でもあった。(*)'89年の、このアニメ化は、原作者の山上たつひこに最後のマンガ製作の活動を人々に示すための機会を提供していたともいえるであろう。


*:但馬オサム「作者引退のために描かれた『がきデカ』新作の味わい深い終わり方」参照、
『こんなマンガがあったのか!』所収1999年11月、メディアファクトリー
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by konlon | 2005-11-28 01:57 | マンガ